イタノ・カルヴィーノ 『不在の騎士』 読了

 本屋巡りの旅をしてみようかと思い立ち、とりあえず栄のジュンク堂に入ってみて見つけた本。これはタイトルと表紙からしてこれは絶対面白いぞ!!と勢いで購入した。良い買い物だった。
 
 タイトルにある不在の騎士とはアジルールフォのことである。この騎士アジルールフォは甲冑の中身がなく、肉体の力に寄らず、ただ意思の力のみで動く不在の騎士なのである。性格は結構神経質で細かいことにうるさく、任された仕事はきっちりこなしてくれる。本書は全体的に大らかで適当でこっけいな登場人物が多い中で、一人神経質に何もかもを覚えており、いちいち口出しをするのだから他の騎士達からは結構嫌われている。
 そんなアジルールフォの冒険譚とかそういう物語かと思ったのだが、本書はそれがメインではない。そもそも300ページもない本でありながら100ページも経とうがあらすじにある冒険譚が一向に始まる気配がないのである。もちろん、冒険譚自体は存在するがなんと後半になってからである。
 本書はたぶんユーモアファンタジーというものなのだろう。キャラクターはこっけいでよく言えば大らかな悪く言えば適当すぎる人物が多い。それを神経質なアジルールフォは指摘していく。そういった対比が良く見られる。一番は自身が何者なのかすぐに忘れてしまうグルドゥルーだろう。この男は鳥の群れに会えば自分が鳥だと思い込んで鳥の真似をする。死者のための墓を掘り、死体を埋めるのに、役割分担だと言って墓穴を掘ったところで自分が穴に入り死者に埋めることを要求する。この肉体はあるが自分自身がない男が肉体はないが自分自身を強固に持つアジルールフォの従者となるのである。
 
 まあ、ユーモアに溢れた作品なので物語のテーマとかまったく意識をせずに読んでいたら、後半に入り、これどうやって終わるの。シリーズって聞いたけど、終わらないのか?と不安になったところで、語り部による超絶強引な力技によって物語は巻きが入り、テーマの回収も含めて一気に終わる。このイタロ・カルヴィーノの強引なテクニックは悲鳴を上げながらも、実に感心した。
 
 最近になってイタロ・カルヴィーノ復刊の波が来ているのか、今年に入ってこの本も含めて二冊も復刊されているので、まだ絶版じゃない本も含めて買えるものは全作読んでみたいと思った。
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空上タツタ 『路地裏バトルプリンセス』 読了

 異能とかもなく、路地裏で戦う。遭遇戦と事前に取り決めた相手と戦うランキング戦ありというエアマスターの深道ランキングとか参考にしてそうですねという感じ。エアマスターが分からない人は読もう。

 路地裏で戦う血闘者は姿を隠すため仮装して戦うという特性からか、女装コスプレ趣味の主人公は過去にまったくしたくない遭遇戦をひたすら挑まれてそのことごとくを返り討ちにしたという伝説を持つ被害者にして王者であった。

 自身の趣味のコスプレのため、廃墟で撮影のために活動(主に他のヒロインといちゃいちゃ)していたら勘違いしたヒロインに挑まれて反射的に倒してしまい、その後に師匠になってほしいと頼まれるという割と最近の師匠モノの王道な感じで始まります。

 本書でちょっと感心したのがこの路地裏での戦い。社会的には当然NGなんですけど、主人公の価値観でもNGなんですよね。過去も物語開始当初も主人公は基本的に合意なく襲ってくる血闘者を返り討ちにしている。そもそも主人公は武術を護身術として学んでいたので、他人に暴力をふるうのはアウトという価値観の持ち主。たまたまランキング戦を目撃して、その場の熱に浮かされたことで価値観が変わっても、社会的には受け入れられず、暴力はいけないし、戦うなら正しい場所で戦うべきという正しい価値観との摩擦が起きる。
 もちろん、バトル物なので、バトルが熱くて面白いんだけど、修行しているシーンのほうが長いので、次巻ではもっとバトルが増えることを期待しています。

葵せきな 『ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー 』 読了

 葵せきなの作風は俺好みからは程遠い人物だと思っていましたが、意外と楽しかったですね。ラブコメが始まるまでは大変つらかったですが、上原くん(男)がデレてからは楽しくなりました。
 ぬるゲーマーである主人公の下に超美少女(天道なんとか)がゲーム部という部活勧誘に来てくれた際には「ああ、オタク版シンデレラストーリー・・・・・・」とすごい冷めた目で読んでいましたが、ガチゲーマーの群れに入ったぬるゲーマーの主人公は見学してもあっさり断り、ぬるゲーマーとして生きていく。正直、ぬるゲーマーの端くれとしては共感できなくないよね。ガチ勢の中でぬるゲーマーって居心地悪いんですよ。モンハンガチ勢と一緒にモンハンプレイすると、戦闘に参加させて貰えないんだぜ? 装備弱くて一発で死ぬから素材集めだけしてろと言われて泣いた記憶は忘れない(MHP2の時代の話) 。

 さて、上原くんがデレてからはラブコメの始まりにして、混迷の始まり。上原くんは上位カーストに属するリア充なので、すぐさま天道さんが主人公に惚れていることに気付いてしまう。誰にも頼まれてないが、その恋路を密かに応援しようとする。
 しかし、主人公のぼっち力の高さとスルースキルの高さにより、このままでは全然発展する気配がない。そこで女子と会話するスキルを上げるべく主人公にA組のゲーマー女子と会話するように指示を出したところで、どんどん混沌とした状況になっていきます。

 ここまで書いて分かると思いますが、この一巻では最大の重要人物が上原くんです。主人公やヒロインは周囲を混沌に陥れていくんですが、彼だけは何とかしようとあがきます。ただ、本人がその方が楽しそうだからという理由と上位カーストに所属していながら初心であったために、彼の予想を超える事態が続出。ついには自分の恋人も混沌としたラブコメ時空に巻き込まれる羽目に。まあ、概ね主人公のせいなんですが。

 まあ、この物語の魅力は混沌とした状況。げらげら笑い飛ばしましょう。あと上原くんがときメモ感覚で主人公のヒロイン選択とかしてるところですね。後者は悩むのがよくわかる。セーブ&ロードができないからヒロイン選択一回しかできないしなー。現実は非情だぜ。

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ジャンル : 本・雑誌

清野 静 『さよなら、サイキック 1.恋と重力のロンド』 読了

 超能力(重力系)を持った主人公が超能力(発火系)を持ったヒロインと出会うことで始まるボーイ・ミーツ・ガールだったら良かった。しかし、この主人公のログくんは最初から14歳の魔女っ娘の彼女持ちという贅沢な男子。というわけで三角関係ものです。本格的に三角関係が始まるのは2巻からみたいですが。

 ヒロインの一人。魔女っ娘のロンドちゃんはかつては死ぬかもしれない病気を背負っていた主人公の恋人です。しかし、病気も最近治りはじめて今はリハビリしながら、これからいろいろと頑張ろう! というところ主人公は彼女といちゃいちゃしながら、正体不明の魔女の業みたいなのと対峙します。メインはいちゃいちゃ。

 もう一人、表紙を飾る発火能力者のヒロインの軍乃ちゃんは目的のためなら多少の羞恥心をいとわず、主人公を操り、探りを入れてきたりしながら学校内や放課後に主人公といちゃいちゃしています。主人公の性欲を巧みに操り、誘導していく姿は見事です。彼女いるのにこの子といちゃいちゃするのはどうなんだ。

 主人公は超能力をぽんぽんと使って人助けをしたり、ロンドちゃんとデートしたり、ロンドちゃんの思いつきで作ったサークルに軍乃ちゃんを勧誘するために口説いたりしています。
 うん、もしかしたら男の子でも、誰にでもこういうことを言うのかもしれないけど、軍乃ちゃんに対する言動とかそれ彼女持ちが他の女の子に言っていい台詞なのかと考えさせられますね。女の子のために身体をはれるのはすごいしラノベ主人公らしいんだけど、お前彼女持ちだろ!! と思う。良い子なんだけど、彼氏としてどうなんだ。

 邪悪な大人になってしまったので、この三角関係を性欲を封じられた女の子(詳細は読んで)VS性欲で操作できる女の子という対立を感じてちょっと前者が厳しすぎる戦いなんんじゃないかと思う。うん、まあ、性欲で動かされる主人公が全部悪いことにしよう。

 基本はボーイ・ミーツ・ガール・ガールなのでいいですね。こういうの好きです。

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久遠 侑 『近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係』 読了

 親戚というのも微妙なほぼ他人の女の子と同居することで、どきどきする男子高校生を書く十年以上前からあるような青春小説。

 いまさらそれだけじゃ面白くなくね? というのは最もだと思いますが、小説で大事なのは描写。ディティールですよ。風呂上りの姿を見てどきっとしたりとか、そういうありがちな部分をきっちり書いてくれる。私生活に紛れ込む異性が気になって仕方ないけど、適切な距離のとり方がわからずに上手く動けないでいるところとか、いいですね。

 主人公以外のキャラクターの内面が伝わってくるというのはいい所でもあるんですけど、これは伝わってこないのがいいですね。主人公はどちらかというと避けている傾向があるので同居相手の内面はあまり読み取れない。彼女も居たことない高校生の男の子に女子の内面を読み取る能力なんてねえよ!
 ここまで語ってこなかったですが、物語の中心にはもう一人、幼馴染の女の子もいます。まあ、読者視点で見ればこの立ち位置なら主人公に惚れているよなあと誰でも察することができるんですが、主人公というフィルターを通すと何を考えているのか、よく見えてこなくなる。

 最大の見所は幼馴染の爆発。主人公は基本的に悪くないんだけど、恋する女の子が焦り溜め込むには十分。正直ここで終わるとかどういうことなの! 2巻で完結するようなので、そりゃあ確かにそれならここだよなと納得するけど、ラブコメが欲しかった俺はお預けを食らった気分。
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↓長いので記事にしました。
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