月刊オススメの本2015年9月号

屍鬼
 読んだのは小野不由美の原作。序盤はSFとして楽しみ、中盤からはホラーとして、そして状況が改善しないもどかしさを挟んでの破壊のカタルシス。どれも最高級の味わいでこんなに面白い本を数年積んでいた俺は何をしていたのだろう。ゴーストハント等の他の小野不由美作品も読みたいところ。そういえば、漫画化とアニメ化もされているようだが、そちらも読んでみたいところだ。絶対に違う物になってるだろうし。

レオ・アッティール伝 (2) 首なし公の肖像
 杉原智則は超人というものを書かない。レオ・アッティール伝の主人公のレオは英雄であり、後世では悪名高い人物として語られているが、とてつもない知略を駆使しているわけではない。今巻で彼は自身の立場と周囲の状況を利用して味方を作ろうとする。しかし、その行動を通して彼は敵を作り出した。アリオン公国と戦うためにはまずなによりも味方が必要でそのために後の火種をまいてしまう。
 彼の講じた策もいくつかは失敗が起きて窮地に立たされてもいる。結果的には最後に幸運を掴み取れた。それこそ英雄の資質なのだろうか。しかし、そこに至るまでには小さな失策や致命的な失策もある。
 正しい選択をするだけではない、成功と失敗も両方含まれる選択をする英雄譚。そこには人間味が生きづいて楽しい。

ヴァーリアの花婿
 表題作が幼馴染物のラブコメとして素晴らしすぎた。そのあまりの素晴らしさに他の収録作品が何か忘れた。この短編には幼馴染物語の夢が詰まっている。幼馴染万歳!

僕のヒーローアカデミア1~5
 印象としてはアメコミヒーローに学園要素を詰め込んだものっぽいという感じなんだけど、アメコミヒーローを読んでないので迂闊なことは言えない。少年漫画の王道を地で行く作品で努力×友情=勝利。王道は面白いから王道なんだ。
 クラスメイトはヒーローになりたいという夢を追いかける同志であり、ライバルでもある。ヴィランとの戦いでは共闘するけれども、クラス内での競争行事では仲間は敵にもなる。すごい能力を使いこなせていない。

赤髪の白雪姫
 最近読んだ少女漫画の中では文句なしのナンバーワン。薬剤師であるヒロインの白雪と、第二王子であるヒーローのゼンはそれぞれ立場が違う。できることが違う。責任の重さも違う。この二人は対等の友人(途中から恋人)なんだけど、互いの立場の違いを理解していて、それぞれ相手の負担にならないように、一緒にいられるように互いにできることを努力していくのが素晴らしい。
 ヒロインの白雪さんが良い。一人で頑張りすぎてしまうのは欠点だけど、まず自分で何とかしようとするその姿勢は良い。

ワールドトリガー 12
 総合力の優れた個人の圧倒的な強さ。それを封じ込める戦術。エース同士の対決。三つどもえの戦いをこのページ数でそれぞれキャラの特徴を引き立たせてまとめてしまうなんてワートリは尋常じゃなくすごい。
スポンサーサイト

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

綾里けいし 『ヴィランズ・テイル』 読了

 ヒロインが私を食料的な意味で食べて! と主人公に迫り部屋に居着いてしまうという学園異形ラブコメである。
 普段から「J・ケッチャムのオフシーズン(食人族との戦いを書いた傑作ホラー)は最高ですよ」とか、「湘南人肉医は人肉を美味しそうに料理して食べるから良い。やはり現代日本なんだから生でそのまま齧るなんてナンセンス。食べ物は美味しく頂かないとね」等と普段から食人物を褒めている俺は読まないといけないんじゃないかと思ったけど、結局誰も美味しく頂かなかったので、非常に残念でした。いや、ヒロイン食べちゃったらシリーズにならないけどさ!
 
 まあ、そんなことは置いておいて、いろいろと何かをこじらせてしまって食料志望を抱くヒロインは、先日自分の姉が殺された際になぜか肝臓が持ち去られたこと。肝臓の摘出は手際よく行われていること。犯人は捕まっているが死因とは全然関係ないこと。授業で解剖を行った際に主人公は冷静で手慣れている様子であったこと、主人公は豚や牛や鶏肉などが食べられないけど好物がお肉であること。そうしたところから、肝臓を持ち去ったのは主人公でその理由は食べるためであると結論を出す。
 
 ここが一般家庭であったならただの誤解で変なストーカーに言い寄られているだけで、なにも問題なかったのだが、主人公一家は異常者の集まりであったので、主人公はもしやと思い兄妹の各部屋にある冷蔵庫を漁る。そうしたら、なんと各部屋から血まみれの衣服やら肝臓やら誰かの手首やらが出てきてしまう。肝臓があるかもって思ったら誰のものかもわからない手首まで出てきてしまったので、主人公は一家を守るためにヒロインの疑惑が家族に向かないように、ヒロインと二人でいちゃいちゃしつつ、食人鬼の疑惑をそらして誰かに押し付けようと行動する。
 
 主人公とその家族はそれぞれ異常な環境で育てられたために、まっとうな倫理観を持っていない。まっとうな過去も持っていない。だから特に主人公は一般に適応しようと擬態する。はみ出し者だから団結して、互いに愛を持っているにも関わらず、まっとうな関係は築けていない。本書はそんな歪な家族が苦難苦闘しながら平凡へと適応しようとする物語である……というのはまだ一巻なので言いすぎか。まあ、そんな初期の西尾維新をほうふつさせる作品である。
 そんなことより、ヒロインの初姫ちゃんがやたらと可愛い。食料として食べられたいのであって、性愛的なニュアンスではない。積極的なアピールをしつつも貞操は守る。調理以外でのお触りは厳禁。不健全なようでいて超健全。はたから見ているとカップルそのものでいちゃいいちゃと見せつけてくれる。いいぞ、もっとやれ。
 
 シリーズ物の一巻としても、一冊完結の物語としても良いバランスで終わっている。こういうラノベもっと増えて欲しい。

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

9月に読んだ本

2015年9月の読書メーター
読んだ本の数:22冊
読んだページ数:6345ページ
ナイス数:13ナイス

ボーパルバニー (ガガガ文庫)ボーパルバニー (ガガガ文庫)
読了日:9月28日 著者:江波光則
もらい泣き (集英社文庫)もらい泣き (集英社文庫)
読了日:9月28日 著者:冲方丁
3月のライオン 11 (ジェッツコミックス)3月のライオン 11 (ジェッツコミックス)
読了日:9月25日 著者:羽海野チカ
青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない (電撃文庫)青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない (電撃文庫)
読了日:9月24日 著者:鴨志田一
マップメイカー―ソフィアとガラスの地図 (下) (ハヤカワ文庫FT)マップメイカー―ソフィアとガラスの地図 (下) (ハヤカワ文庫FT)
読了日:9月23日 著者:S・Eグローヴ
文句の付けようがないラブコメ (ダッシュエックス文庫)文句の付けようがないラブコメ (ダッシュエックス文庫)感想
ハッピーエンドのために諦めないのはいいんだが、死の安息を得ることなく諦めるまで悲劇を強制的に付き合わされているのでひどいよね。
読了日:9月22日 著者:鈴木大輔
屍鬼〈5〉 (新潮文庫)屍鬼〈5〉 (新潮文庫)
読了日:9月22日 著者:小野不由美
屍鬼〈4〉 (新潮文庫)屍鬼〈4〉 (新潮文庫)
読了日:9月22日 著者:小野不由美
笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)
読了日:9月16日 著者:森博嗣
求刑小説。求刑小説。
読了日:9月14日 著者:日日日,十文字青,橘ぱん,森田季節,藍上陸,
明日、今日の君に逢えなくても (MF文庫J)明日、今日の君に逢えなくても (MF文庫J)
読了日:9月14日 著者:弥生志郎
ファタモルガーナの館 ―あなたの始まりを告げる物語―ファタモルガーナの館 ―あなたの始まりを告げる物語―
読了日:9月13日 著者:縹けいか
天獄と地国  (ハヤカワ文庫JA)天獄と地国 (ハヤカワ文庫JA)
読了日:9月11日 著者:小林泰三
レオ・アッティール伝 (2) 首なし公の肖像 (電撃文庫)レオ・アッティール伝 (2) 首なし公の肖像 (電撃文庫)
読了日:9月10日 著者:杉原智則
捏造トラップーNTRー 1 (IDコミックス 百合姫コミックス)捏造トラップーNTRー 1 (IDコミックス 百合姫コミックス)
読了日:9月9日 著者:コダマナオコ
Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ (3)Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ (3)
読了日:9月8日 著者:桜井光
学校を出よう!―Escape from The School (電撃文庫)学校を出よう!―Escape from The School (電撃文庫)感想
ものすごくkey作品っぽい。
読了日:9月7日 著者:谷川流
潔く柔く 1 (マーガレットコミックス)潔く柔く 1 (マーガレットコミックス)
読了日:9月6日 著者:いくえみ綾
ヴァーリアの花婿 (花とゆめCOMICS)ヴァーリアの花婿 (花とゆめCOMICS)
読了日:9月6日 著者:あきづき空太
僕のヒーローアカデミア コミック 1-4巻セット (ジャンプコミックス)僕のヒーローアカデミア コミック 1-4巻セット (ジャンプコミックス)
読了日:9月6日 著者:堀越耕平
赤髪の白雪姫 コミック 1-13巻セット (花とゆめCOMICS)赤髪の白雪姫 コミック 1-13巻セット (花とゆめCOMICS)
読了日:9月6日 著者:あきづき空太
ワールドトリガー 12 (ジャンプコミックス)ワールドトリガー 12 (ジャンプコミックス)
読了日:9月5日 著者:葦原大介

読書メーター

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

杉原智則 『レオ・アッティール伝Ⅱ 首なし公の肖像』 読了

 1巻ではラストの覚醒までいまいち影が薄かった主人公のレオだが、2巻では表舞台に出て華々しく活躍してくれる。
故国に戻りヘイデンと敵対することを心に決めたものの、6年間も人質としてアリオン王国にいた彼にはアトールでの人脈も兵も味方も何もない。そんな彼は味方を得るために動き出す。国内の地方領主の争いに目をつけて、味方を得るために暗躍する。

 今巻で主人公のレオは自分の立場、自身を取り巻く状況、自国内の争い、他国からの厄介事のすべてを利用した。レオには最初から最後まですべてを見通す化け物のような頭脳は持っていない。それゆでに相手の考えを読むよりも、レオは相手の行動を誘導する方向へ動く。それでもレオの策は失敗することもあるが、逆に想定外に大きな結果を得ることもある。この作品のキャラクター達は有能ではあるが、有能でありすぎない。そういったところに人間味という魅力を生み出している。

 今回レオのとった策が実を結んだのはレオが今まで無名だったからだろう。レオは今までアリオン公国の辺境で人質として、戦いどころか陰謀にも無縁の生活をしていた。敵対した相手はレオのことを警戒すべき相手としてあまり認識していなかった。1巻で宣戦布告した相手であるヘイデンには圧倒的な権力と兵力があり、レオには何もなかったために警戒を怠っていた。自国内での争いに介入した際などは、そもそも相手にはレオに敵視される理由なんてどこにもなかったのだから、レオに対して警戒なんてするはずもない。

 たぶん、今巻でレオにとって一番の難問はパーシー、カミュ、クォン、ついでにセーラといった自分で動かせる部下を手に入れるところだったろう。パーシーは騎士として部隊を動かす知識と経験があり、アトール国内のことについてはレオよりも詳しい。カミュはネタバレになるので詳しく言えないが、教徒として重要な役割を担っていた。クォンは今回あまり目立たなかったが、集めた兵を率いられる人間はやはり必要。彼らがいなければレオの策略は行使できないし、戦場に出て生き残ることもできない。その説得こそ、最も重要なところではないだろうか。

 レオばかり語ってしまったが、今回の功労者であるカミュも魅力的に描写されていた。彼が今までどのように生きてきて、何を嫌悪し、勝利を求めるようになったのかが語られる。その思いは生きていく上で役に立つばかりとは限らない。今後カミュを焼き焦がして死に向かわせるかもしれない。一巻冒頭で語られたように、アトール公国は滅びることになるのだから。
 一巻でのパーシーもそうだったが、杉原智則の書くキャラクターには欠点が多い。万能な英雄など出てこずキャラクターはみんな欠点を複数持っている。高い能力を持っていても別にそれが欠点を補うとは限らない。その不完全さが人間味を感じさせ、楽しませてくれる。

テーマ : 最近読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

Galle(がれ)

Author:Galle(がれ)
↓長いので記事にしました。
当サイトの基本情報
本好きへの100の質問
リンク集

本棚
カテゴリー
検索
批評サイト
お薦めサイト
物書きな方々
ラノベ感想
応援しています!
カウンター
応援バナー