死体

俺が初めて死体を見た時、父はこう言った。
「まるで寝ているみたいだろ」
俺はとても賛同できなかった。こんなものが生きているはずがない。
確かに穏やかな表情だ。
しかし、これは眠ってなどいない。絶対に。
死んだのは父の母、つまり祖母だった。
俺は怖かった。自分が、こんなものになってしまうことが。

二度目に死体を見た時、俺は悲しかった。
今度は母の祖母、つまり曾祖母だった。
死んだことより、もう会えなくなってしまうことが悲しかった。
やっぱり、穏やかな表情をしていた。
でも、もう一度動くとは微塵も思えない。
やはり、生きた人間と死んだ人間は全く違うものだ。

三度目に死体を見たのは今日、バイト帰りの駅でだった。まだ目に焼きついている。
階段を降りる時、前のめりに転んだのかもしれない。それは頭を下に向けていた。
駅員が二人居て、一人は脈を測っていた。
血は出ていない。でも、ピクリとも動かなかった。
次の電車に乗ろうとする人達が見ながら階段を上っていた。
俺も階段を上りながら見ていた。
電車が発車するとアナウンスが流れたので、俺は急いで階段を上り、電車に乗った。
あれが死体だったという確証はない。
でも、あれは確かに死体だった。あれが生きた人間のはずがない。
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人の死に触れることほど怖いものはきっと世の中にはないのでしょうね。それが自分であれ他人であれ。私もあまり人の死には触れたくはありませんね。そのことを考えるだけで、何も考えられなくなります。
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↓長いので記事にしました。
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