更伊俊介 『犬とハサミは使いよう』 読了

 タイトルに本を連想させる単語が一文字たりとも存在しないのに、本、作者、読書について語った本だった……。

 ストーリー自体は簡単なので、さらに簡単にして紹介すると。読書バカの主人公が行きつけの店で強盗に遭遇して殺されたが、読みたい本を読めずに死ねるか! と執念で復活。ただし、ダックスフンドの姿で。そうして、(犬だから)本が読めずに狂いそうになっているところに、ハサミ持った危険人物(♀)が現れ、飼い主とその犬として共同生活を送り始めるというお話。

 時間は有限、一生で読める本はほんの少しだけ。俺はこの主人公ほど読書狂ではないけれど、それでも本を持たずには出歩かないし、本を買う時ですら本を持って行く。読む本がなくなり、暇になると非常に辛い。本が絶版するのが怖くて家には積読がいっぱいだ。そんな業が深い読書家だから、この本には共感できることもできないことも多かった。これは読書家にこそ、読んでほしい一冊……ではないんだよなあ。

 物語後半の「作家と読者の対峙」、「読書」についてはやりたいことも伝えたいことが完全ではないにしろ俺にも伝わった。でもね、純粋にエンターテイメントとして面白くない。対峙の仕方がギャグになっていて、真面目に受け取ろうにも阻害される。バカっぽくてもそれをねじ伏せるだけの描写があれば感動するもんだけど、それがなかった。非常に残念な結果だった。

 それはさておいて、この本で個人的にすごく良いと思ったのは、ヒロインは暴力を振るうんだけど、本当に「ただの暴力女」であって、ツンデレではないところ。素直になれない、嫉妬などの理由で悪いことをしていない主人公に暴力を振るうヒロインにはイライラするんだけど、この本のヒロインはそもそも恋愛感情を微塵も持ってないい。暴力を振るうということに言い訳が一切ないのが清々しい。主人公とヒロインの掛け合いもテンポがよく、爆笑できるというほどではないけれど、楽しい。このテンポの良さは、著者が二人いるからなのかな。

 面白いところとつまらないところが見事に分かれていたけど、楽しいところは楽しいから良し。どうやら次巻も出るみたいだし、ちゃんと買おう。
スポンサーサイト

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Galle(がれ)

Author:Galle(がれ)
↓長いので記事にしました。
当サイトの基本情報
本好きへの100の質問
リンク集

本棚
カテゴリー
検索
批評サイト
お薦めサイト
物書きな方々
ラノベ感想
応援しています!
カウンター
応援バナー