リチャード・アダムズ 『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち 上・下』 読了

 予知能力をもったファイバーによって彼らの村に危険が迫っていることを知ったファイバーの兄ヘイズルは長に避難を提案したが、長は真面目に取り合わず、ヘイズルは何匹かのうさぎにこの事を話し、危険のない新しい住処を探すために旅に出る。安全なうさぎ穴から出て、エリル(うさぎ語で敵の意。猫や人間など)に満ちた冒険。危険がほとんどないものの、なぜかうさぎの数が少ないカウスリップの村……。

 野生のうさぎを主人公にした冒険小説。ピーターラビットなどで穏やかで平和なイメージのあるうさぎだが、この本は「野生の」うさぎであり、その物語は苛烈な旅と戦いに満ちている。出会うものほぼすべてが敵であるヘイズル達の冒険は危険と困難に満ちていて、非常にスリリングであった。

 内面を描いているため彼らの精神性は人間へと近づいてしまっているものの、その肉体的制約はうさぎ本来のもので習性も現実のうさぎどおり。この辺のさじ加減が非常によくできているなあと思う。うさぎ達には彼らなりの文化・風習や神話があり高度な知性を持っているのだが、その一方でブラックベリ(仲間内で一番の知恵者)など一部のうさぎを除いてその大半は「木片は水に浮く」ことは理解できても、「水に浮く木片の上に乗れば沈まない」ことは理解できないなど、その知性には限度がある。また、特に前半では顕著なのだが、彼らの外面だけを読むとそのほとんどが現実のうさぎの生態を忠実に書いてあって興味深く読めた。うさぎ詳しい人ほどこの物語はリアリティを感じながら読むことができると思う。

 ここまでは上巻まで、下巻からは新しい住処であるウォーターシップ・ダウンに辿り着いたヘイズル達が雌を得るための冒険としてイエウサギの飼われている農場へ冒険したり、他所のうさぎ村へ派遣し軍国主義的なうさぎ村エフラファと敵対するなどうさぎらしさはなくなってくるものの、ビグウィグによる敵地への潜入や戦いなどものすごく熱くなってくる。ビグウィグのかっこよさ。その戦いはやはり苛烈ですさまじい。リアルで想像すると結構ショックな光景に。

 語りきれなかったけど、うさぎの神話とかうさぎ語や彼ら特有の言い回しなんかも、非常によくできている。死ぬことを「走ることをやめる」と表現するとかツボにはまった。
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