貴志祐介 『新世界より』 上・中・下 読了

 救いようのない話だった。読み終えてから何日か経ったけど、何度思い返してもうつになる……。
 
 この小説は主人公早季の半生を小説形式で書いた手記という形で書かれている。冒頭から悲惨な事件が起きることは分かっていたんだけど、悲惨な事件が起きる前から酷い世界でラストの展開がここまで心を折りに来るとは思わなかった……。
 
 物語は早季が12歳、14歳、26歳の三部に分かれている。子供時代から書かれているということは、子供時代を黄金時代として描き、楽園の崩壊が書かれていくのかなあと勝手に思っていたんですが、この本には黄金時代なんて存在せず、むしろ子供時代が一番危険なディストピアだった……。
 
 幼年学校卒業時点の話あたりから、だんだんこの世界について不安を抱くようになってきたが、早季達が今の社会の成り立ちについて、知ってしまったあたりから一気に物語は重苦しいものになっていく。人類の超能力の目覚め、超能力に対する差別や超能力による犯罪、戦争の歴史。奴隷王朝の誕生。虐殺の歴史。そして、今の安定した社会に達するためにどうやって問題を克服したのか。簡単にしか語られなかったものの、希望を抱けるような情報はなく、聞いてしまった早季達はこの情報を知ってしまった自分達の命が危ういことに気づく。
 
 その後、外来種のバケネズミとの戦争に巻き込まれたりとか第一部だけでもまだいろいろとあるんだけど、あんまりネタバレにするのもあれなので読んでください。戦争シーンも印象的で危うさを感じさせるし、一緒にいる仲間以外は誰も信頼できないので終始油断のできない張り詰めた雰囲気が出ていて面白い。
  
 一見普通の社会を装いつつ、子供を殺すことに特化したディストピアを築いている恐ろしい社会だった。これが悪意で行われているなら、利益で行われているなら話は簡単なんだけど、社会を存続させるために行われているんだよな……救いがたい。まあ、そのツケを払う羽目になったりもするんだけど……こんな社会滅びてしまえばいいのに。
 
 ここまで夢も希望もないと心にダメージが大きい。
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