杉原智則 『レオ・アッティール伝Ⅱ 首なし公の肖像』 読了

 1巻ではラストの覚醒までいまいち影が薄かった主人公のレオだが、2巻では表舞台に出て華々しく活躍してくれる。
故国に戻りヘイデンと敵対することを心に決めたものの、6年間も人質としてアリオン王国にいた彼にはアトールでの人脈も兵も味方も何もない。そんな彼は味方を得るために動き出す。国内の地方領主の争いに目をつけて、味方を得るために暗躍する。

 今巻で主人公のレオは自分の立場、自身を取り巻く状況、自国内の争い、他国からの厄介事のすべてを利用した。レオには最初から最後まですべてを見通す化け物のような頭脳は持っていない。それゆでに相手の考えを読むよりも、レオは相手の行動を誘導する方向へ動く。それでもレオの策は失敗することもあるが、逆に想定外に大きな結果を得ることもある。この作品のキャラクター達は有能ではあるが、有能でありすぎない。そういったところに人間味という魅力を生み出している。

 今回レオのとった策が実を結んだのはレオが今まで無名だったからだろう。レオは今までアリオン公国の辺境で人質として、戦いどころか陰謀にも無縁の生活をしていた。敵対した相手はレオのことを警戒すべき相手としてあまり認識していなかった。1巻で宣戦布告した相手であるヘイデンには圧倒的な権力と兵力があり、レオには何もなかったために警戒を怠っていた。自国内での争いに介入した際などは、そもそも相手にはレオに敵視される理由なんてどこにもなかったのだから、レオに対して警戒なんてするはずもない。

 たぶん、今巻でレオにとって一番の難問はパーシー、カミュ、クォン、ついでにセーラといった自分で動かせる部下を手に入れるところだったろう。パーシーは騎士として部隊を動かす知識と経験があり、アトール国内のことについてはレオよりも詳しい。カミュはネタバレになるので詳しく言えないが、教徒として重要な役割を担っていた。クォンは今回あまり目立たなかったが、集めた兵を率いられる人間はやはり必要。彼らがいなければレオの策略は行使できないし、戦場に出て生き残ることもできない。その説得こそ、最も重要なところではないだろうか。

 レオばかり語ってしまったが、今回の功労者であるカミュも魅力的に描写されていた。彼が今までどのように生きてきて、何を嫌悪し、勝利を求めるようになったのかが語られる。その思いは生きていく上で役に立つばかりとは限らない。今後カミュを焼き焦がして死に向かわせるかもしれない。一巻冒頭で語られたように、アトール公国は滅びることになるのだから。
 一巻でのパーシーもそうだったが、杉原智則の書くキャラクターには欠点が多い。万能な英雄など出てこずキャラクターはみんな欠点を複数持っている。高い能力を持っていても別にそれが欠点を補うとは限らない。その不完全さが人間味を感じさせ、楽しませてくれる。
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