パトリック・ロスファス 『風の名前1~5』 読了

 本書はパトリック・ロスファスのデビュー作にして、日本ではハリポタやロード・オブ・ザ・リング後のファンタジーブームで雨後の筍の如く翻訳された海外翻訳ファンタジーの中でも、ファンも多く有名な作品で続きの邦訳を待ち望んでいたファンも多くいたのだが、いかんせんロスファスが続きを出さないというか、一度書いたけど書き直しただかで、原書が2011年になるまで出なかったとか。当然、日本のファンタジーブームは既に(少なくとも海外翻訳FTに関しては)終焉を迎えており、元々出版していた白夜書房は出す気がなく、映画化・TVシリーズ化の話が出て、ようやく早川書房が権利を買い取って文庫で復刊となったと思われる(後半は推測です)。素晴らしいことに第二部も翻訳予定が決定しているらしい。
 
 はい。めちゃくちゃ面白いです。原書自身も長く早川書房の基本である分冊で出されているので、流石に第一巻から物語が劇的に動くということはないんだけど、めちゃくちゃ面白い。
 簡単なあらすじを含めて述べよう。道の石亭という小さな宿屋の主人コートは、実は無血のクォートとか王殺しのクォートとか物騒な呼び名を持つ伝説の人物だった。隠遁生活をしているところだったのだが、ある紀伝家が彼をつきとめて数々の伝説について、真実の話を教えて欲しいと懇願するが、クォートはやってもいいが曖昧にやるのは嫌なので3日はかかると言う。
 第一巻では旅芸人の一座の一人であったクォートの幼少期が語られる。父や母やその他の人物、途中から合流した秘術士から様々なことを教わっていく。
 第二巻では一座を謎の集団チャンドリアンに皆殺しにされたクォートは浮浪児として、必死で命を繋いでいく様子が描かれて行く。ここから劇的に面白い。浮浪児であるクォートは旅芸人としていろいろな町を見てきた。秘術士の元で様々な勉強をしてきた。だから手先が器用だったり、観察眼に優れるのだが、それだけで生きていくには厳しいのが書かれて行く。
 第三巻では秘術校編(魔法学校編)になり、一座で培った機転やリュートの腕、一座の秘術士から習った知識。やり返さずにいたら酷くなる浮浪児時代の気性などで、活躍しつつも鞭打ちを受けたりしているが、二巻からそうだが、とにかく金のなさが語られていくのが厳しい。
 その後も、チャンドリアンの影を追ったり、いつ会えるのか分からない美少女との出会いなどもいろいろあるのだが、本書はとにかく金がないのが語られていく。
 
 本書を読んで誰もが一番印象に残っているのではないかと思われることとして、クォートが浮浪児時代以降にとにかく金がないことだった。浮浪児時代は当然として、大学入学時には奨学金のようなものを勝ち取って入っても、学院に通い続けるために金がなく、勉強を頑張るためには金を稼ぐ時間が減る。そういった苦学生の辛さが存分に語られる。音楽の才能はあるけど、楽器を買う金がない。演奏で稼ごうにも、一発で賞をとり、自由に演奏できる権利を獲得しなければいけないなど、厳しい生活が語られる。
 本書は魔法学校物と書いたが、共感術という魔法はあまり使われない。共感術は法則がしっかりとしたあり、曖昧なところはあまりないSFみたいな魔法なのだが、他人に対して悪意を使ってはならない。使えば放校となるので学生達はおいそれと使わない。クォートは貴族の息子アンブローズと大学で早々と敵対することになるのだが、共感術を使って戦いなんて始めれば一瞬で放校になるので、アンブローズは貴族としての金を使ったやり方をメインで攻め、クォートは機転で乗り越え相手をコケにすることでやり返すといったことがある。これもまた面白いのだが、魔法も時には使われる。絶対にばれない状況で共感術を使ったりといったところがあり、これがなかなか上手いと感心してしまう。
 第二部からはもっと魔法が使われたり冒険が出てくるだろうから、早く来年の翻訳が出るのが待ちどおしい。
 
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