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宮内悠介 『超動く家にて』 読了

 眠れなかったときに、なんとなく書いたのでひたすら冗長な文章が生まれた。

トランジスタ技術の圧縮
 トランジスタ技術という大量の広告によってかなり分厚くなっている雑誌が世の中には存在し、物理的に圧縮する人間がいる。いや、世の中には本当に圧縮している人間がいるらしく、この短編でいう毟り派の手法はインターネットをググれば出てくる。そんなトラ技を圧縮する大会という馬鹿げた競技について書いているのだが、読んでいる最中は寝起きだったせいで、トランジスタ技術を圧縮する大会は実在するのかとか思ってたんですが、そんなわけねー。
 それはともかく、自分も分厚いSFマガジンも圧縮した方がいいのかなと思った。

文学部のこと
 文学を作成するということで、最初粘土板でも作ってるのかなと思ったが、どう読んでも酒だった。文学はお酒みたいなものという主張には一片の真実が入っているのかもしれないが、おれは4年ぶりくらいに飲んだビールが一杯飲み干すことができず、見かねた上司が飲んでくれたという経験をしたばかりであり、お酒について語る資格がないので他人に任せたいところだが、そもそも、まじめに話すことではない気がする。するすると読めてさっぱりとした味の良い短編でした。
 
法則
 ヴァン・ダインの二十の法則が現実に適用される世界の話なのだが、これは自明のこととして語られてるのではなく、主人公が気づくという話である。馬鹿げているようで、大真面目に書かれていて、面白い。殺人事件を起こすには資格がいり、資格のないものには決して起こせない。面白い。

エターナル・レガシー
 ええっと、自信を失った囲碁棋士が自信をZ80だという変な男と交流して、復調していく話である。宮内悠介といえば、伊藤計劃囲碁の作家のひとりであることは有名であり、伊藤計劃囲碁将棋部である。そんな囲碁の印象が強い作者による話なのだが、新技術によって失われたものを再度見つめなおすことの大切さを説いた話ではない。
 AIによって人間の知能の優位性は失われるということに対して悲観的な話という実際には囲碁将棋界とか別に負けても、わいわいしてたので、最近ではあまり見られないレガシーなストーリーです。なつかしもう。

アニマとエーファ
 バカSF短編集ではなかったのか!? ロボットによって物語が語られるようになる。そのきっかけとなったロボットによる自伝。割と疑問なのだが、性に奔放な女の子の性生活に対して思うところがあるロボットってなんでだろう。欲求がなくても、社会通念を学び常識から外れていることに対して思うところが生まれてしまうのだろうか。

超動く家にて
 誰かがこの本を野崎まどっぽいと言っていたのだが、なるほど、確かに超動く家にては野崎まどが書きそうな話であり、この短編集を見てみると作風は異なっても、両者には共通するユーモアがあるのかもしれないななどと思った。個人的にこの短編は紙で読むか端末を二つ使って読んだ方がよい。図があるから。
 いや、一番面白い。読み進めていくと1ページ単位でなんかトンデモな事実がどんどん出てくるのだが、ばっかでーと笑える。
夜間飛行
 書こうとするとネタバレになるのだが、こういう意味あんの?という事例は実在するんだよなー。

ゲーマーズ・ゴースト
 駆け落ちをしてライトバンで逃げていたが、なんかよくわからないが、相方がいろんな人を拾っていて、一緒に走り続けて、各々の衝撃の真実が明かされたりとなんかあったのだが、なんかよくわからないけど面白かった。これがナンセンスギャグというやつだろうか。

かぎ括弧のようなもの
 小説のいいところに現実を必ずしも映像で表せる物を書けるという点がある。つまり、視覚化できないものを物理的に存在することにできるということで、つまり、かぎ括弧のようなものと書けばかぎ括弧のようなものがなんなのかは曖昧(ようなものだから)で曖昧なまま話を進められる。本書におけるかぎ括弧のようなものとは、物理的に存在するが、かぎ括弧のようなものであり、かぎ括弧ではないかもしれない。何が言いたいかというと何が言いたいか今まさに迷走しているので、わからん。いや、面白かったよ。

犬か猫か?
 このぬいぐるみは犬なのか猫なのかという口論をする話で答えは出ない(ネタバレです)。なるほど、これはシュレディンガーの猫を題材にした物語でうんたらかんたらで、ええと、面白かったです。


今日泥棒
 これをこれだけ面白く書けるというのは純粋に小説を書く能力が高いんだろうなというのを感じる。日めくりカレンダーを勝手にめくられていたということで怒る父親と面倒くさがる家族の話である。たったそれだけの話ですごいトリックとかも何も出てこない。でも、面白い。好き。

エラリークイーン数
 エラリークイーン数1とはエラリークイーンのパクリなんじゃないかというのは笑った。Wikipedia風のなんか。そういや、エラリークイーンをあんまり読んでいないので読もうと思う。

スモーク・オン・ザ・ウォーター
 隕石と煙草と共生。異種知性態との共生といえば、たったひとつの冴えたやりかたが有名だが、あちらが悲劇の百合であった。というか、よくよく考えるとあまり知性との共生。共生できないという結論になることが多すぎるのだが(SFホラー映画でよくみるよね)、こちらは明るい。まあ、人間の体なんて寄生虫だらけなのだから、一匹知性があるものが増えたからなんだというのだという気もする。

星間野球
 暇を持て余している実験衛星のメンテナンス要員が、野球盤でどちらが次の交代で家に帰るのかという問題を解決する話。これは過去にも読んだことがある。NOVA+だったか、東京創元社の年間傑作選だったのか思い出せないのだが、この短編で宮内悠介はユーモアもいけるということを知った。
 
クローム再襲撃
 俺は今まで世の中に散らばる村上春樹の文体模写という名の模造品は読んだことがあるが、そういえば村上春樹を読んだことはなかった。6年くらい前に読もうと思って買ったはいいが積んでいる。村上春樹はノーベル文学賞をとれるのかという話題に対する批判を目にすることがあるが、実際に村上春樹にノーベル文学賞をとってほしい人間は見たこともない。マックの女子高生。ウィリアムギブソンは三度読んだが二度(ギブスン単著)ほど地獄のような読書だったので、10年くらいは敬遠したい。村上春樹を読もうと思った。

あとがき
 この本を読むまで、というか、ブログでは今まであとがきについて語ったことがなかった気がするのだが、そのことについて反省した。ぼくは場合によってはあとがきを読まないことすらある(本を一気読みするときとか)不良読者なのだが、この本はあとがきも面白いし、ついでに宮内悠介のエッセイを読みたいと思った。各短編について、この時どんな状態だったのかということとかが語られている。
 これはあとがきのネタバレなのだが、作者は直木賞候補にもなった盤上の夜のラストに星間野球を入れようとしたという正気を見失っている様子が語られている。編集者に却下されたらしいが、それはそうだよな。人間は自分自身を客観視することができず、作者は自作についての客観視が難しいというのは、あるらしい。作者の意図を作者にしかわからないが、作品から意図しない文脈は自然と発生したりしてまうのかなと全く無関係なことを思ったりしていた。
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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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