平鳥コウ 『JKハルは異世界で娼婦になった』 読了

 なんか嫌な感じに話題になっていましたが、となりの801ちゃんの中の人というか、本人が話題になる前から絶賛していて、読んでみようと思っていながらもえっちな小説だよと言われると流石に店頭で買うのも恥ずかしくて電子書籍を買いました。

 まあ、実際はセックスを取り扱った小説であってえろい小説ではないのか。いやまあ、娼婦が取り扱っているので、パコパコとセックスするんですが、美少女文庫ではないのでセックスをねっとりじっとりと取り扱っているのではなく、娼婦の仕事だからとか作劇に必要な程度に書いている。

 まあ、そんなことはさておき感想ですが、非常に楽しかった! 本書はJKハルが異世界で娼婦になったというタイトル通り、JKの描写がしっかり息づいている。異世界において幻想を書くのではなく、女性への幻想をぶち壊す小説でした。電車内で読んだのでげらげら笑えなかったんですが、ハルのJKっぽい描写には笑わせてもらえました。あと物語をどう終わらせるのかと思ったらなかなか見事なワザマエでサクッと終わらせて長引かせないでいい感じの長さで終わりました。だらだら続けられそうだけど、続けなかったのはいいですね。

 いや、非常に良いですね。JKのハルは異世界で生き抜く方法が身体を売るくらいしかなかったので、春を売って生きていく。ハルちゃんは強く、明るく、たまに娼婦とか嫌だこの世界はクソだと思っていながらも、文句を言いながらも異世界で生きるという新しい現実をみて、強く生きていく。仕事で性を売っている彼女はサービスで気持ち良いとか言うし、あいつは下手くそだとか思ってても言わないプロ。プロなのでレイプ紛いのことをされても、仕事として受け入れるし、ちゃっかり追加料金をもらう。軽いノリでありながらも、強い子だなあと思う。
 もともとオタク気質ではない彼女は異世界転生とかのお約束とかを知らないし、興味もない。オタトークをする相手にキモいなと思う。そういうことが赤裸々に書かれるので、なんかフィクションでくらいは女性に幻想を抱きたい人間にはオススメしないですが、ぼくはこういう素直に毒を吐く子は好きです。

 ハルちゃんへの対比として書かれるのが千葉くん。彼は良いキャラクターですね。彼は異世界転生俺TUEEEという感じのチートスキル持ちで異世界を満喫しています。元々異世界転生物が好きなオタクであり、異世界転生した先が楽しくて楽しくて仕方ない。現代知識で意外と無双できなかったりと壁にぶつかったりもしますが、壁を乗り越える根性がないので、あきらめてチートスキルで闘技場で稼いだり安全マージンを維持しながらレベル上げをして異世界転生の王道を楽しもうとする。
 彼は幻想に生きているので、現実を見ていない。ここでいう現実とは登場人物は人間であるということ。同じ異世界転生者であるハルちゃんに対する接し方からしてギャルゲー感覚だし、俺の奴隷として養ってやってもいいぜみたいなことを言い出す。セックスもマグロで相手を気持ちよくさせようという努力を一切していない。なんていうか、悪人ではないんですが、彼は彼で女性への尊厳を持っていない(というか人間への尊厳がない)ので、後日譚で彼を育てよう(調教)としてくれる女性が出てきたのは救いなんじゃないですかね。
 なんかすごくボロクソ言っていますが、彼の気持ち悪い言動をハルちゃんと一緒にキモーイと言うのが本作の楽しみ方のひとつだと思うので超重要存在です。

 まあ、ここまで書いたけど何も気にせず異世界転生にツッコミ、女性への幻想を持つ人へのキモさをキモーイと言いながら楽しく読めばいいと思います。正直、ここでは詳しく書かないけど、物語のたたみ方は予想外に上手かったので、すげえなあと思います。この作者の他の作品も読んでみたいなあと思ったくらい。

 本書と合わせて読みたい本は30歳の保健体育だと思う。

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月刊オススメの本2017年11月号まとめ

風の万里 黎明の空 ―十二国記
 なんかどれを読んでも傑作が出てくるぞ!? すげー面白い。もう読み始めると止まらなくなってしまうので、徹夜覚悟しないと読めない本。心の持ちようで世界は変わるみたいな当たり前のことを言うのは簡単実践するのは難しいことについて、語っている本でもあるのだが、三人の主人公でいろんな立場から語っているが、まあ、それは良い。慶国の問題としては王が他世界の人間であるので、いきなり王になっても何をすればいいのかさっぱり分からない。世界の常識を共有していない。何代も女王が続き、悪政が続いていたので、またダメな女王みたいな扱いをされる陽子だったが、このまま政治がわからん臣下も信用できんという状況が長く続けば自分はダメになると行動を移せるのが王としては未熟でも人間的な成長を感じる。

公爵令嬢の嗜み 1-2
 赤子から1から生まれなおしてその世界での生き方を学んでいくという人生リセット物ばかり読んでいたので、大きくなってから自身は転生者であることを思い出す! という昔ながらの転生物あるあるが逆に新鮮に感じられた。昔の王道は異世界から現代へ転生していた気がするけど、最近のトレンドは逝ってくる異世界。
 転生前にも生きてきた人物と転生後記憶のない状態で生きてきた人物がハイブリットされているという主人公はちょっとよくわからないように思えましたが、FGOでイシュタルとか孔明を持っているお陰で「英霊憑依だ」と納得しました。基本的に会計事務所としての前世能力と異世界で貴族として生きて培ってきた貴族パワーで無双しているわけですが、バランスがとれていて良いですね。女性向けだからかヒーローの活躍する余地を残してあるというか、領主代行なので、ポジション的に無双しすぎないのが楽しい。
 なんていうか、基本努力で獲得したものを活かしているので、それぐらいの天佑があってもいいよなと思える。

たったひとつの冴えたやりかた
 たったひとつの冴えたやりかたってファーストコンタクト物だったのか。新しい知性体との遭遇してからすごいぐいぐいと引き込まれていった。かっこいいタイトルに相応しいスマートな会話文。面白い。
 3つある話のうち最後のファーストコンタクト物(異星人は一つではない)もべらぼうに面白い。人類は宇宙へ勢力圏を拡大し、宇宙は広大である。人類は宇宙に拡散している同胞の悪を制御できない。宇宙海賊などと先に出会ってしまった異星人と秩序側の人類が関係を修復して、協力関係を築く物語である。なんかこう物語もべらぼうに面白いのだが、悪と善の対比が面白いなあと思った。宇宙海賊といった悪の勢力は、異星人と会っても、そもそも意思疎通する気がなくその準備はしていない。そのため、後から善の宇宙飛行士が異星人と出会っても、互いに意思疎通ができない。しかし、善の側は異星人と出会ったときのため、こちらの意図を伝えられるように準備をしているので関係修復のため対話ができるようになった。センス・オブ・ワンダーに溢れているいい小説だった。

われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集
 なにかこう、さすがに最近は見なくなったんだけど、AIの話をする際にロボット三原則が実際は問題があるとか言う話をAIブームのときに目にしてたんですが、ぶっちゃけ原作からして問題発生してるじゃねーか。なぜメディアは真面目な顔をしてロボット三原則は実際には使えない? みたいなこと言ってたんだ。原作読んでないのか(お前だってこれが初読だろ)。
 ロボット三原則を搭載したロボや搭載していないロボがなぜ問題を発生させてしまったのかを突き詰めている。面白い。

裸足で、空を掴むように 梅田阿比短編集
 物語にテーマはもしかしたら必要かもしれないが、別に作者はテーマを語りたくて描いているわけではないかもしれないと作者のコメントを読んで思いました。ただ、単に女装するショタを描きたいだけでもいい(銀の誓約)。結果的に良い話風になったりすれば。まあ、童話的なすごく良い話も収録されてるんですけど、なんかすごいな。冷静に考えてみて銀の誓約の女中の行動って全然素晴らしいものではないのに、なんか納得しかけてしまったぞ。

カードキャプターさくら 全12巻
 実はカードキャプターさくらについては放映当時見ておらず、大学生ぐらいになって大量のロリコンを生み出した脅威のアニメぐらいにしか思っていなかったんですが、友人がファンで熱烈にオススメされたこともあり、少しずつ読んでいました。
 心情の描写を絵や台詞で綺麗にきめやかに描いていて、いいですね。作中世界でもあんまり認められていない恋愛も多いのですが、物語の雰囲気は全体的に希望や未来に向かって開かれています。これはさくらちゃんの「絶対だいじょうぶだよ」の台詞を筆頭に明るい発言が多いというのもあるのですが、さくらちゃんがそもそも世間の目とか気にしないでいられる。つまり、自分の感情に外的要因を持ち込まない人間であり、まあ、ぶっちゃけ子供だからなんだけど、人類が本来持つ輝きなんじゃないでしょうか。ぼくたちはさくらちゃんみたいな原石を持っていたはずなんだよ!
 われわれは、どうして汚れてしまったのか。

黒い睡蓮
 黒いなんとかというタイトルでミステリと聞くとクトゥルフを思い出してしまいますが、全然関係ありません。なんか終盤になって一気に面白くなるタイプのミステリだよということで、読みやすいながらも、あんまり乗り気ではなかったのですが、最後まで読んで一気に評価が変わりました。ワザマエ、これは巧みの業です。いやあ、これは翻訳者も苦労しただろうなあと思います。かなりの力作にして傑作。

血界戦線 グッド・アズ・グッド・マン
 秋田禎信と血界戦線のコラボレーションが非常に素晴らしいものであることは前巻で証明されておりましたが、今巻は血界戦線でのマッドサイエンティストで趣味で世界を破滅させようとするよく分からない奴である堕落王フェムトです。秋田禎信先生は昔からいるせいかラノベ界でも、ギャルゲー文脈とは異なる感じで独特な変なキャラを作る人でして、なんか呼吸が変というか、わりと脈絡がない感じで変です。
 グッド・アズ・グッド・マンでは、フェムトが普通になろうと言い出して、量産型フェムトマンみたいなのがたくさん出てくる話です。我々はフェムトについてあんまりよく知っているわけではないので、普通になりたいとか言い出すかというと、わからないのですが、割と思いつきで行動しているぽいことは事実なのでなんか言って行動してもおかしくないよなあという感じです。
 個人的に良いよなあと思うのはレオが普通であることは原作でもアニメでも何度も言われていることですが、普通ってことは普通に大事なところでも失敗する。ミスるし、誤魔化すところがいいですね。

ワキヤくんの主役理論
 お隣さんとの壁が物理的にぶっ壊れて同棲状態になった! 女の子との同棲生活! しかし、そこから時間をすっ飛ばして、完全に愛し合ってる感じ。まるで長年連れ添った夫婦感ある生活をしているワキヤくんですが、もうお前ら結婚しちゃえよ! という感じで作者からこのカップリングに萌えろ! という強い意思を感じます。しかし、サブヒロインのさなかちゃんのちょっとした仕草が可愛いです。彼女の行動はすべて、気になっている男子とお近づきになりたいという感じで、共通の友人に手伝ってもらったぽく二人きりになったり、バイト先に行ってみたりと、行動はそれなりにダイナミックですが、実際にワキヤくんと出会ってみるとぐいぐいとはいけない感じで、滲み出るあなたが気になってますアピールが可愛いですね。どうみてもサブヒロインなのがつらい。

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月刊オススメの本2017年10月号まとめ

約束の方舟
 なんか瀬尾つかさは非常によく出来たSFなボーイ・ミーツ・ガールの名手であるというのが本書や年間日本SF傑作選の中編などを読んでいて思うんですが、もっと早川でしっかりじっくり書いてくれると嬉しいなあと思います。
 上下巻でまとまっており、入り込むまでに時間がかかったが、入り込んだら一気に読んでしまった。もっとSFボーイ・ミーツ・ガールが読みたい。社会とかの軋轢に揉まれたながら頑張って欲しい。

閉店時間
 愛に苦しむ不倫カップルを繊細に丹念に描写してきたかと思ったらこの。この。まあ、胸くそ悪い小説を書いてるので、人を選ぶでしょうけど、この素晴らしい小説を読んで欲しい。読んでいるとええええええマジでとか言いたくなってくるぜ!

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月刊オススメの本2017年9月号まとめ

 おめー今から去年の9月に読んだ本かよ! というツッコミはおやめください。

長いお別れ
 旧訳版。とてつもなく、エモい。俺はこの本を読んでエモいとは何か完全に理解しました。キャラクターの行動が、書き込まれている一文一文という文章が、エモい。エモいという概念を知りたいという人はこれを読みましょう。まあ、それはともかく、チャンドラーという大物作家を初めて読んだわけですが、こんなに特定の感情を揺さぶられるとは思いませんでした。こ、これがベストセラー作家の実力……屈してしまった。

Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 外伝
 映画化もされましたね! 見れなかったよ!!! 前半の純朴な人斬りおじさん(剣士以外には無害)を悪鬼羅刹にしてまう凜雪鴉のクソ野郎ぶりも光りますが、後半も畳み掛けるように殺傷院キアラみたいな人を破滅させて、ついでに妖魔を誑かす凜雪鴉のクソ野郎ムーブ。信じられるか、こいつ主人公なんだぜ……TVで騙されてはいけない凜雪鴉は悪党を倒す悪党である。

ぼくたちのリメイク 1・2
 内容を読んでエロゲかよ!と思いましたが、木緒なちはエロゲのシナリオライターだったはごめん。ロゴデザインの方がよく知っている。だらだらとせず、引き締まった早さで展開が進んでいいなーと思います。主人公が妙におっさん臭いんですが、まあ、木緒なちはおっさんだもんな……アラサーとか中途半端だもんな。
 それはともかく、むちむちとしたイラストはええですね。

足のない獅子
 良い。なぜKindle化されない。冒険小説として読みやすいので軽く読めて、こういうのは若い子に読んで読書の楽しさを味わって欲しいですね。

ある日、爆弾がおちてきて 【新装版】
 古橋秀之は傑作だった。なんか昔読んだときは古橋秀之慣れしてたいので、よく出来ているけど、サイコー!ってならなかったんだけど、改めて読むとすべてが傑作じゃないか……なんだこの才能の塊みたいな気持ちになりますね。ボーイ・ミーツ・ガールを読んでたらいきなり新規書き下ろしでおっさんが出てきたけど、当時若者だった人たちに向けて……みたいな話にしてはちょっと年齢高くない? いや、面白いんだけど。
 やはり古橋秀之は天才なので、もっと新刊を出して欲しい……アンケートか。

ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争
 とても面白い。臆病であるが故に策を巡らせて自分達の安全を手に入れようとする主人公。なかなか捻くれていて良い。

ラグナロクEX. BETRAYER
 リロイに対して鬱屈した感情を持っていながらも相棒として確かな信頼と、絆はあった。だけど、リロイ・シュヴァルツァーにはついていくだけの強さがなかった。、リロイ・シュヴァルツァーの側にいるということは、強さについていくことであった。ジェイスは確かに戦闘能力が足りない。もし、ついていっても、いずれ死んでいたかもしれないだろう。それでも、ついていなかったことで彼の人生は転落を始める……。

ななしのアステリズム 全5巻
 5巻の表紙から主人公が全員抱いてやるぜ! みたいな内容になるのかと思ったけど、当然違いましたね。いや、ぐちゃぐちゃの泥沼になりそうだったけど、踏みとどまって綺麗なガール・ミーツ・ガールとボーイ・ミーツ・ボーイになりましたね。もうちょっと読んでいたかった気持ちはあるんだけど、友情物語としては綺麗だったので良し。

青の数学
 一言で言って羨ましい話だった。俺は数学が好きだったけど、数学を一生を使う暇つぶしにできなかった人間なので、その楽しさを知っており、妬ましい物語だった。
 今からでも再び勉強してみようかなあ。もっと時間が欲しい。人生は短すぎる。

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12月に読んだ本

 今年のラノベ目標は達成しました。書きたい記事はあるので、頑張りたい。

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